分子科学討論会は、分子に関わる様々な分野の研究者、教育者、知識人である1500名を越える個人会員、ならびに20社の賛助会員を有する、私ども分子科学会が主催する最大の行事です。毎年、開催地の実行委員会が個性を発揮しながら主体的に運営してまいりましたが、2020年初頭からの新型コロナ感染症の蔓延により、予防対策に多大の苦心を払いながら新しい形式での開催を模索してきております。実際、2020年秋に予定していた第14回分子科学討論会は中止のやむなきに至りましたが、学生会員の発表機会を確保するために急きょ分子科学会オンライン討論会を開催しました。2021年は分子科学討論会として初めてフルオンラインという形式で開催いたしました。本年も、慶應大学の皆さんによる周到なご準備のもと、無事に開催の運びとなりました。実行委員会の多大のご尽力とご配慮に心より御礼申し上げる次第です。
この討論会の参加者は、最近では分子科学会会員と非会員をあわせて1000人を超え、発表講演数は計600~800件に上ります。最新の研究成果が報告されるとともに、それに関する大変活発な議論が行われるのが、本討論会の最大の特長と言えるでしょう。また、多くの関連企業・協賛会員による企業展示が併設され、分子科学とその関連技術の多面的な最新情報を一度に得ることができます。さらに、多くの若手研究者や学生諸君が積極的に参加しており、若手の登竜門や人材育成の重要な場ともなっています。昨年のオンライン形式による開催でも、これらの良き伝統をそのまま引き継ぐことができましたことは大変に喜ばしいことです。
分子科学は、分子の構造や性質、反応性を深く理解し、遠い星間空間での物質進化から地球上の生命活動に至るまで、分子が関わるありとあらゆる現象を解明する学問です。さらに、そのようにして積み上げられてきた「分子の英知」をもとに新たな分子を生み出し、今までにない機能を創成する学問が分子科学であり、自然科学の様々な分野を貫く基幹であると同時に、私たちの日常に深く根ざすものでもあります。このような分子科学の最前線を肌で感じることができる第16回分子科学討論会に、是非、ご参加ください。
2022年3月
分子科学会第8期会長 大島 康裕