分子科学討論会とは

 分子科学討論会は、分子科学会の主催する最も主要な学術会合で、今年で第3回目を迎えます。本討論会は、2006年までの分子構造総合討論会の良き伝統を引き継ぎ、自由で闊達な議論を大切にする討論会です。第3回分子科学討論会は、名古屋大学東山キャンパスで開催されます。
 これまでの分子科学討論会では、1,200〜1,300名の参加を得て約900件の研究発表を行って頂き、自由な討論を通じて深い議論と幅広い学術交流を進めてきました。本討論会では、広く開かれた討論会を実現するために、登壇条件を分子科学会の会員に限っておりません。研究発表の領域は、物理化学・化学物理学とその周辺の学際領域を包含し、学術の深まりとともに学術のダイナミズムを実感して頂ける優れた討論会となるように運営を心がけております。上記の内容に関わりのある方なら、会員の如何を問わずご発表、ご参加できます。
 分子科学は、広く分子および分子集合体の構造・反応・物性を研究する学問分野です。対象とする分子は、簡単な分子から生体分子や高分子におよび、そのおかれる環境も、孤立分子からクラスター、液体・溶液、結晶・薄膜や表面吸着状態、生細胞、さらには高圧下や高温・低温、宇宙空間、強光子場のような極限環境まで様々です。分子はこれらの環境に応じて多彩な構造、種々の反応、様々な性質を示しますが、それらを量子論的、化学結合論的、統計熱力学的な原理が貫いており、対象とする系の階層に応じた法則が存在します。
 分子科学討論会で発表される研究の主題は、分子構造や反応論、種々の分光法や回折法などの実験手法、クラスターや液体・溶液、分子性固体、高分子・液晶・生体関連物質などの性質ならびに機能、さらには表面科学等におよぶ広い対象物質や現象の実験的・理論的扱いを含んでいます。そして、討論会の精神は以下のようにまとめられます。
(1) 分子と分子集合体について、これまで蓄積されてきた広く深い物理的・化学的な知識に裏打ちされていること。
(2) 広大な対象物質群がさまざまな環境下で示す多彩な構造・反応・物性を、これらの基礎的知識や、新たに展開される研究成果によって正しく理解すること。
(3) これらの理解をもとに、優れた機能の発現と制御、新たな興味深い性質を示す物質系の創造、生命現象の分子論的理解を追求すること。
 分子科学討論会では、これらの精神を礎としながら、基礎知識に裏付けされた発表、深く本質を掘り下げた議論、自由で闊達な討論を通じて、分子科学分野の益々の振興を進めています。これまでの第1回仙台、第2回福岡での本討論会では、たいへん多くの方々が参加者して頂き、最新の成果の研究発表と活発な議論が行われるとともに、分子科学分野の研究者や学生の皆様の良い懇親、交流の場をもつことができました。分子科学分野をホームグランドとする皆様をはじめ、関連分野の皆様とともに本学術分野を発展させるために、名古屋大学で開催される第3回討論会にも、ご発表、ご参加を是非ともお願いいたします。きっと新しい発見、新たな出会い、新たな可能性の拡がりが、ご参加の皆様に一人ひとりにあるものと思います。

分子科学会 会長 中嶋 敦

上へ戻る